ファクスで聴覚障がい者の世界広がる
生まれながらにして耳の不自由な人は、言葉も不自由で、電話を通しての会話や意思疎通はできない。ただ、電話をかけたい相手が健聴(耳の聞こえる)の人であれば、他人の手助けを得て意思疎通等は可能である。しかし、秘密の話は、他人の手を借りるわけにはいかない。
ところが、昭和56年9月にNTT(当時の電信電話公社)から営業用としてミニファクスが比較的安い価格で発売されたので、狛江市では、このミニファクスを福祉機器として活用することを決め、57年4月から障害者に貸し出すことにした。
初めは、障害者団体の役員宅と行政機関に設置し、機器使用料は市の負担とした。全国的に見ても先駆けの制度で、障がい者の方々の喜びはひとしおであった。
59年度になって、国も後追いのかたちで、日常生活用具給付事業の中でミニファクスも認めることとなり、60年度から、使用料助成の対象を団体役員から一般聴覚障がい者に拡大した。
また、人命や財産を守るために、消防署の協力を求め、市の費用負担で、61年2月18日に狛江消防署にも設置され、開通セレモニーの模様がNHKテレビで報道された。東京消防庁管内で、初のミニファクスによる119番通報体制の確立である。
また、民間事業所の先駆けとなったのは、狛江市内を営業区域とするタクシー全社で、62年11月11日からタクシー会社の全面的協力で、ファクスによるタクシーの呼び出しが可能になった。
この頃には、ファクス機器の開発が相当進んで、新機種が続々と市場に登場し、NTTのミニファクスは製造中止となった。
これを機会に、63年度からミニファクスから新機種に切り替え、使用料の助成から機器の給付へと制度の内容を改めた。
これにより、狛江市の聴覚障がい者の方たちの世界が広がってきたことは、担当職員の熱意の結晶であると自負している。
今後は、店屋物の出前など日常生活にも活用できるよう市内の店舗等にも広がっていくことを期待してやまない。