ナッジを取り入れて公衆喫煙所の環境を改善しました!
ナッジとは?
ナッジとは、行動科学※の知見を活用し、人々の行動を強制することなく自分自身や社会的に望ましい方向に促す工夫や方法のことで、行政政策やマーケティングなどさまざまな場面で活用されています。
※ 行動経済学、心理学、社会学、認知科学等の行動に関する自然・人文・社会科学の総称
例えば、日常生活の中でよく見るこれらの光景もナッジの一つです。
- トイレに貼られた「いつもきれいに使っていただきありがとうございます」の張り紙
- 「期間限定」や「数量限定」と強調された商品やメニュー
- お店のレジ前にある足跡マークやライン
- ウェブ上で「メルマガを受け取る」に最初からチェックが入った項目
ナッジを取り入れた背景・課題
狛江市では、「狛江市路上喫煙等の制限に関する条例」により、狛江駅周辺の路上喫煙を禁止しており、屋外で喫煙する場合は狛江駅前に設置した公衆喫煙所を利用していただくよう案内しています。
しかし、当時の公衆喫煙所(狛江駅南口喫煙所)は所内にたばこのポイ捨てが目立ち、衛生的にも見た目にも改善の余地がある状況であり、喫煙所の利用を妨げている可能性がありました。
そこで、喫煙所の環境を改善するため、ナッジを活用して喫煙所内のたばこのポイ捨てを減らす試みを行いました。
※ナッジを取り入れる前の喫煙所の様子(たばこのポイ捨ての状況)
取り入れたナッジの紹介
喫煙所内側(1) | 喫煙所内側(2) | 喫煙所外側 |
1.「愛煙家の80%はマナーを守る人です」ポスター
人が無意識に多数派の行動に合わせる「同調」の認知傾向を利用して、多くの喫煙者はマナーを守っているというメッセージを出すことにより、利用者をマナーを守る行動に誘導するものです。
さらにこのメッセージによって、自分の周りの利用者はマナーを守る人だという感覚が生まれ、周囲の目を意識することでよりポイ捨てをしにくい雰囲気がつくられたと考えています。
2.「たばこのポイ捨てチェックスポット」&「ここにポイ捨てすると外から見えます」
ポイ捨てが多くみられる場所に外からの視線を集めつつ、利用者には外から見られていることを意識させることによって、ポイ捨てをしにくくするものです。
壁面に窓枠を設置し、外側には「たばこのポイ捨てチェックスポット」、内側には「ここにポイ捨てすると外から見えます」というメッセージを表示しています。
外側 「たばこのポイ捨てチェックスポット」 |
内側 「ここにポイ捨てすると外から見えます」 |
3.「すみません 灰皿を使ってもいいですか?」ポスター
灰皿周りに人が滞留すると灰皿の利用の妨げとなります。
この表示は灰皿の周りで喫煙する利用者に灰皿を使いたい人が周りにいることに気づいてもらい、譲り合いを促すものです。
4.複数のA1ポスター
外側の壁面に大きなサイズのポスターを複数設置して通行者の目を引き、利用者が視線を感じることでポイ捨てしにくい環境をつくるものです。市の情報発信にも役立っています。
5.火消し&「今日はどちらで消しますか」
灰皿の利用を促すため、灰皿に「今日はどちらで消しますか?」というメッセージとともに複数の火消しを設置し、無意識に灰皿を使いたくなる仕掛けを取り入れました。
6. 女の子の感謝のメッセージ
「あなたはきれいに使ってくれる人」と見なして感謝のメッセージを送ることで、マナーを守る行動へと誘導するものです。
また、大人は子どもの前ではルールを守らなくてはならないという意識を持つ人が多いことから、倫理感にも同時にアプローチしています。
7.「ポイ捨てを見つけたら灰皿へ」トングの設置
喫煙所内にトングを設置し、たばこのポイ捨てを見つけたら灰皿に捨てるルール(デフォルト)を設定しました。
また、トングを使いたくなるメッセージも一緒に掲示し使用を促しています。
8.屋内・灰皿への誘導矢印
矢印を見るとその先へと意識が向かう認知傾向を利用して、出入口では喫煙所内に、喫煙所内では灰皿に誘導する矢印を表示しました。
9.座面に「吸い殻は灰皿へ」
人は座るときに座面を確認する傾向があることから、腰かけスペースの座面に灰皿利用を促す表示を行いました。
ナッジを取り入れた結果
狛江駅南口喫煙所において、ナッジを取り入れる前後で確認されたたばこのポイ捨て本数は以下のとおりとなりました。
※土曜日・日曜日を含む7日間における各日午後3時に確認した平均本数。吸い殻以外のポイ捨て(たばこの空き箱、空き缶等)は含まない。
- ナッジ取入前(令和5年11月29日~同年12月5日)
10.0本/日 - ナッジ取入後(令和5年12月9日~同年12月15日)
1.3本/日
結果として、ナッジを取り入れた後のたばこのポイ捨て本数は、取り入れる前と比べて約1/10に減少し、ナッジを取り入れたことによりたばこのポイ捨てを大きく減らすことができました。
今後も、よりよい環境づくりに向けてナッジを有効に活用していきます。
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