2月21日(木曜日)開催の平成31年狛江市議会第1回定例会において、松原市長は平成31年度における狛江市の市政運営方針について所信を表明しました。
 以下はその全文です。 

 平成31年狛江市議会第1回定例会にあたり、平成31年度狛江市一般会計予算案の概要等の説明を中心に、新年度における狛江市の市政運営方針を申し上げます。

 平成31年度は、「平成」の時代から新しい時代への幕開けとなる歴史的な年となります。平成元年当時7万3千人だった市の人口は今や8万2千人に、一般会計当初予算額は、169億円から286億円と大きく増えました。「平成」の時代の前半は、小田急線の複々線・連続立体交差化や都市計画道路・公園の整備、エコルマホールやあいとぴあセンターなどの公共施設の整備が進められ、狛江のまちが大きく変わりました。その後、国の三位一体の改革などもあり、財政的に大変厳しい時期を迎えましたが、それを乗り越え、近年では高齢化の進展に加え、保育園の待機児対策など新たな課題への対応が求められています。
 まちづくりの基本は、「市民参加と市民協働」です。市では平成15年に「狛江市の市民参加と市民協働の推進に関する基本条例」を制定しました。それから15年以上が経過し、新しい時代を迎えようとしていますが、市民参加と市民協働をより深化させ、市民が主人公のまちづくりを進めてまいります。私は、これを狛江市の「シビックプライド」に育てたいと考えています。シビックプライドとは、都市に対する市民の誇り、あるいは自負であります。市民が主人公の深化した市民参加と市民協働のまちづくりは、まさに狛江市をよりよいまちにするために市民自身が関わり、自らが当事者なのだと自覚しつつ、進めるまちづくりです。狛江のまちは、市民の皆さん自らがまちづくりを進めているのだと自負できるようシビックプライドを醸成させてまいります。

地方財政をめぐる動きと狛江市の平成31年度予算案の概要

 日本の経済は、緩やかな回復が続いていますが、平成31年度については、先行きのリスクとして消費税率の引上げや海外経済の不確実性などの影響に留意する必要があるものの、経済の回復基調が持続することが期待されています。政府は、新経済・再生計画の中で、国と地方を合わせたプライマリーバランスの黒字化の目標を2025年度に設定し、国・地方が力を合わせて取り組む必要があるとしています。また、地方財政については、2021年度まで地方の歳出水準について地方の安定的な財政運営に必要となる一般財源の総額を平成30年(2018年)度地方財政計画の水準を下回らないよう実質的に同水準を確保するとされました。そのような中、平成31年(2019年)度の地方財政は、地方が人づくり改革の実現や地方創生の推進、防災・減災対策等に取り組みつつ、安定的な財政運営ができるよう、地方交付税等の一般財源総額について、前年度を上回る額が確保されています。国においては、10月に予定されている消費税率の引上げに対応するため、臨時・特別の措置を講ずることとされています。幼児教育の無償化やプレミアム付き商品券などは市の当初予算では計上していませんが、制度の詳細が示されましたら、補正予算で対応する予定です。
 平成31年度一般会計予算案は、285億9,800万円、前年度比1億9,200万円、0.7%増となり、特別会計を含めた予算総額は、470億6,800万円、前年度比300万円の若干の減となりました。歳入では、市民税はふるさと納税の影響があるものの、個人所得の伸びや法人の収益の改善などにより増額となっています。10月に予定されている消費税率引上げによる影響は、市に収入として入るまでタイムラグがあるため見込んでいませんが、幼児教育の無償化に係る平成31年度の地方負担分は、全額国費で対応されることとなっています。歳出では社会保障費が増額となりましたが、これまで取り組んできた保育園の待機児対策に加え、小学生の放課後対策として学童クラブの待機児解消にも取り組みます。また、北部地域の子育て拠点施設として整備した「こまっこ児童館(北部児童館)」の開設や子ども家庭支援センターと児童発達支援センター、教育支援センターの機能を有した子育て・教育支援複合施設の整備を行うなど、子育て支援の充実を図る予算となりました。

平成31年度予算案の主な取組等について

 次に、平成31年度予算案の主な取組等について、説明申し上げます。

健康・福祉

 団塊の世代が後期高齢者になる2025年を目途に、住み慣れた地域で安心して生きがいを持って暮らし続けられるよう、地域包括ケアシステムの構築を進めています。切れ目のない医療と介護の提供体制の構築を推進するため、慈恵医大第三病院に在宅療養後方支援病床を確保することで、在宅療養を要する高齢者やその家族が安心して生活し、医療・介護従事者が不安なく在宅療養に携われる環境を整備します。認知症施策についても、慈恵医大第三病院と連携して認知症の方とその家族への支援事業を実施するほか、軽度認知障がいを含め認知症と診断された方や認知症になったらどうなるか不安を持つ高齢者に対し、本人にとってよりよく暮らすためのヒントをまとめたガイドブックを配布します。高齢者の身近な相談場所である「こまほっとシルバー相談室」の運営とともに、高齢者の見守りと虐待防止に向けた啓発にも取り組みます。介護サービスの質の向上と人材不足を解消することを目的として、介護職員の研修受講費用に対する補助制度を創設します。
 これからの人生100年時代を健康で生き生きと暮らすためには、まずは健康に関心を持つこと、そして、生きがいを持つことが大切です。高齢者の生きがいづくりと超高齢社会を地域で支え合う仕組みとして介護ボランティアポイント事業を試行実施します。これは健康づくりを目的とした健康ポイント事業と併せて周知を行うことにより、それぞれの取組の相乗効果を期待するものです。高齢者の口腔機能の維持、向上を図るため、出張による口腔ケア講座を新たに実施します。また、会員数が減少傾向にある老人クラブの活動を促進するため、会員規模に応じた加算を行うよう補助金の見直しを行います。
 障がいのある方が住み慣れた地域で安心して暮らし続けられるために、地域生活支援拠点の整備が必要です。当初、和泉多摩川駅前のぽかぽか広場に整備する予定でしたが、市の方針を再度整理し、新たな場所で早期に整備できるよう検討を進めてまいります。

子ども・教育

 保育園待機児ゼロの実現に向け、認可保育園2園の開設等により保育定員を4月に125名、10月を目途に109名拡大し、翌年度に向けても1園整備することにより更なる定員拡大を図ります。また、一時保育についても、より利用しやすくするために定員を拡大します。
 子育て拠点施設のなかった北部地域に学童クラブや乳幼児親子、中高生の居場所機能も有した「こまっこ児童館(北部児童館)」を4月に開設し、子育て環境の地域格差の解消を図ります。また、今年度改修工事を行った岩戸児童センターと新たに整備した第五小学校放課後クラブと併せて、学童クラブの定員を90名拡大します。更に、翌年度の新規開設に向けた準備も行うことで、学童クラブの待機児対策も進めます。
 今年度に実施した子どもの生活実態調査及びニーズ調査を踏まえながら、子育て中の方々と狛江の未来の子育てスタイル等をともに考えるワークショップなどを通して、子ども・子育て分野のマスタープランである、こまえ子育て応援プランを改定します。ひとり親家庭の困りごとにきめ細かく対応できるよう、新たにひとり親家庭等専門相談員を配置し、ひとり親家庭の相談体制の充実を図ります。また、聴覚障がいを早期発見するための新生児を対象とした聴覚検査費用の一部を助成するとともに、児童扶養手当の支給回数の見直しや就学援助費の新入学学用品費の支給額の拡充を行います。
乳幼児期から学齢期にかけて、子どもの育ちや切れ目のない支援に向けて、子ども家庭支援センターと児童発達支援センター、教育支援センターの機能を有した子育て・教育支援複合施設の整備と開設に向けた準備を行います。
 学校教育では、児童数が増加している第一小学校について、必要な教室を確保するための増築棟の実施設計を進めるとともに、熱中症対策や災害時の避難所としての良好な環境を確保するため、屋内運動場に空調設備を設置します。また、情報教育環境や英語教育の充実、不登校児童生徒へのきめ細かな対応などに取り組んでいるところですが、学校における働き方改革への取組として、中学校への部活動指導員の配置や校務支援システムの導入、学校徴収金システムの導入準備、学校給食費会計の公会計化に向けた準備を進めます。
児童虐待の防止に向けて、子ども家庭支援ネットワーク会議において関係機関との連携や個別ケースへの対応を行っていますが、児童虐待の未然防止と虐待を疑われる児童の早期発見に向け、調布警察署と情報共有等に関する協定を締結して、その取組を強化します。

安心・安全

 防犯対策として、町会や商店街等による地域の自主的な防犯活動を補完し、犯罪を抑止するための防犯カメラの設置に対して補助を継続するとともに、新たに維持費に対しても補助制度を創設します。小中学校の通学路の安全強化に向けて、地図データによる安全管理や中学校の通学の経路にも計画的に防犯カメラを設置していきます。また、スマートフォン等で子どもの位置情報を確認できる子ども見守りサービスを試行実施します。特殊詐欺被害防止に向けて、高齢者への自動通話録音機の貸与を引続き実施します。
 地震対策として、平成30年6月に発生した大阪府北部地震を踏まえ、民有地のブロック塀撤去に対する助成制度を創設するとともに、木造住宅の耐震化を促進するため、耐震改修助成金の限度額を引き上げます。高齢者と障がいのある方に対しては、家具転倒防止器具の取付支援を行います。また、緊急輸送道路の沿道建築物の耐震化や重要な幹線等の下水道管渠の耐震診断を実施します。
 近年、日本各地で大規模な災害が相次ぐ中、災害時の情報伝達手段として臨時災害放送局を開設できるようFM送信装置を導入します。福祉避難所の体制整備に向けては、防災行政無線戸別受信機の設置を完了させるとともに、要配慮者に対する備蓄品の整備を段階的に行います。

まちづくり・環境

 水道道路の安全対策については、東京都及び調布警察署と連携して取り組んでいますが、拡幅工事の事業認可取得に向けて、今年度中に東京都において地域に対する説明会が開催されることとなっており、引続き積極的に協力、支援をします。また、水道道路とのネットワークが求められている調布都市計画道路3・4・16号線については、現在進めている電力中央研究所前の事業を着実に行うとともに、小田急線高架下から世田谷通りまでの区間の事業化に向けて測量を実施します。また、円滑に事業を進められるよう長い間活動を休止していた土地開発公社の再開に向けて準備を進めます。
 安全かつ円滑な交通環境を確保するため、計画的に道路の改修を進めていくほか、幹線道路については、防災力の向上に加え、良好な景観形成等の観点から優先的に無電柱化の整備を行う路線の調査やバス路線等の陥没事故を未然に防ぐための路面下空洞調査を実施します。
 まちづくりにおける市の将来ビジョンを明らかにするとともに、目指すべき都市像を実現するため、都市計画マスタープランの改定及び立地適正化計画の策定に着手します。空家の利活用に向けては、現在の状況や課題を把握するため、所有者へのアンケートを実施します。
 環境施策では、路上喫煙等の制限に関する条例の改正に伴い、喫煙マナー向上を推進し、誰もが快適に過ごせるよう路上喫煙等の巡回指導体制の見直しを行うとともに、狛江駅南口の指定喫煙場所を改修します。昨年の台風24号により公園や樹林地で倒木したことを踏まえ、利用者の安全を確保するため、高木せん定など樹木の適切な管理にも努めます。また、家庭ごみの減量に向けた取組として、小型生ごみ処理容器のモニターを募集します。

文化・市民生活

 商業振興については、新たに策定する商業振興プランに基づき、充実した市民生活を支える商業として、市民と事業者との好循環を実現し、活力あるまちを目指します。また、地域に根差した創業者を増やすための創業支援に取り組むとともに、子育てや介護などの理由によりテレワークなど多様な働き方を希望する女性のためのセミナーを新たに開催します。
 農業振興については、狛江独自のGAP手法によって生産している狛江ブランド農産物の普及を推進し、ふるさと納税の返礼品としても市外に向けてPRしています。また、市民が農業に対する理解を深めることを目的とした市民農園は、南部地域にはない状況となっていましたが、4月には駒井町に開園し、岩戸南にも年度内の開園に向けて整備します。
 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会及びラグビーワールドカップ2019に向けた気運醸成を図るため、パブリックビューイングイベントやパラスポーツの競技体験、選手と交流できるイベント、ボランティア講座等を実施します。また、障がい者スポーツ教室の体験・普及事業やスキルアップ教室等の市民がスポーツに触れる機会を増やし、地域スポーツの振興を図ります。
 市の観光資源である多摩川での花火大会は、昨年は荒天により中止となりましたが、8月7日に4年振りの開催を予定しています。横穴式石室が発見された猪方小川塚古墳のある猪方小川塚公園と亀塚公園を歴史公園として整備し、市には狛江百塚と言われるほど多くの古墳がありましたが、そのような市内にある古墳や史跡、文化財等をまとめた文化財マップを作成します。

行財政

 市の財政状況は、一時期に比べると改善していますが、高齢化の進行とともに保育園の待機児対策などにより社会保障費が年々増加しており、厳しい財政運営であることに変わりありません。団塊の世代が75歳以上となる2025年に向けて、更に社会保障費の増加が見込まれます。また、その後は学校施設の建替も視野に入れておかなければなりません。持続可能な自治体として、中長期的な視点を持った財政運営に努めます。
 市民参加と市民協働の推進に向けては、市民活動支援センターの役割が重要となります。また、市は、クラウドファンディングサービス「FAAVO東京調布・府中」のエリアパートナーになりましたので、市民活動支援センターとの連携も含めて、市内の地域活動を行う団体を支援し、地域活性化の促進につなげてまいります。
 市のハラスメント対策として、「狛江市職員のハラスメントの防止等に関する条例」に対応するため、外部有識者を含む苦情処理委員会の設置や外部相談員を設置しましたが、加えて職員研修やコンプライアンスチェックノートの配布により、全庁的な意識啓発に更に努めます。また、市の未来を担う人財の育成を図ることを目的とした未来戦略会議を行っているところですが、今後の施策への展開も期待しています。
 昭和45年の市制施行から50周年という大きな節目を目前に迎えようとしています。「これまでの半世紀」の市の歴史や文化、市民の皆さんが築き上げてきた功績を見つめ直すとともに、「これからの半世紀」に向けて、まちへの愛着や誇りを更に深める機会としなければなりません。平成31年度は、「私たちがつくる水と緑のまち」を将来都市像とした第3次基本構想の最終年度であり、その取組について総仕上げを行うとともに、平成32年(2020年)度からの10年間を展望した第4次基本構想を策定する年となります。新たな未来へつなぐ基本構想を、市民参加を通して策定してまいります。

今後に向けて

 平成31年度予算は、私が市長に就任して最初の予算となります。公約でもあります「日本一やさしいまち・狛江」をつくるために、仮称ではありますが、人権尊重基本条例の制定に向けて検討しているところです。人権は、全ての人に認められる基本的な権利であり、私たちが幸せに生きるための権利です。人権の尊重について、市民の皆さんと共有し、差別や偏見のない「人にやさしいまちづくり」を進めてまいります。