2月20日(木曜日)開催の令和2年狛江市議会第1回定例会において、松原市長は令和2年度における狛江市の市政運営方針について所信を表明しました。
 以下はその全文です。 

 令和2年狛江市議会第1回定例会に当たり、令和2年度狛江市一般会計予算案の概要等の説明を中心に、新年度における狛江市の市政運営方針を申し上げます。

 令和2年度は、昭和45年10月1日に狛江町から狛江市になって50年になります。そして、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が開催される記念すべき年になります。7月10日には、聖火リレーが狛江駅南口をスタートし、緑野小学校まで聖火ランナーが市内を走りますので、沿道で多くの方の応援をお願いします。大会の気運醸成に向けてイベントを実施するとともに、狛江の未来を担う子どもたちを代表し、小学校5・6年生と中学生には東京で開催される大会を直接観戦する体験を通じて、人生の糧となる掛け替えのない財産を残していただきたいと思います。市制施行50周年と東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を記念し、大盆踊り大会を開催します。市制施行50周年の記念式典は10月25日に実施しますが、市を挙げて祝うとともに、歴史や文化、市民が築き上げてきた功績を見つめ直し、また、年間を通して様々な記念事業を開催しますので、より多くの方に参加いただき、地域へのつながりや狛江への愛着を深めていただく機会をつくります。

地方財政をめぐる動きと狛江市の令和2年度予算案の概要

 日本の経済は、中国経済の先行き等の海外経済の動向や金融資本市場の変動の影響に留意する必要があるものの、雇用・所得環境の改善が続き、経済の好循環が進展する中で、内需を中心として景気回復が見込まれています。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の影響が経済面にも広がっており、今後の動向を注視しなければなりません。国の予算案は、高齢化に伴う医療費の増や幼児教育・保育の無償化などにより社会保障費が大きく増え、2年連続で100兆円を超える過去最大の予算となりました。地方財政対策としては、人づくり革命の実現や地方創生の推進、地域社会の維持・再生、防災・減災対策等に取り組みつつ、安定的に財政運営を行うことができるよう、地方交付税等の一般財源総額について、前年度を上回る額が確保されています。
 令和2年度一般会計予算案は、299億2,900万円、前年度比13億3,100万円、4.7%増となり、公営企業会計へ移行した下水道事業を除いた特別会計の総額は167億3,910万3千円となりました。歳入では、市民税は、ふるさと納税による減収が年々大きくなっているものの、個人市民税の納税義務者数の伸びや固定資産税の新築家屋の増加などにより増額しています。昨年10月からの消費税率引上げにより、地方消費税交付金が大きく増額となっていますが、その分については、普通交付税の算定において相殺されることから、一般財源としての影響はないところです。しかしながら、自主財源が増えることにより財源不足が小さくなるため、収支不足を補てんするための特例として発行できる臨時財政対策債を減額することができました。歳出では、幼児教育・保育の無償化による新制度や保育園の待機児解消に向けた保育園の新設等による保育定員の拡大、子育て・教育支援複合施設「ひだまりセンター」の開設、小・中学校施設の改修など子育て支援の充実を図る予算となりました。

令和2年度予算案の主な取組等について

 次に、令和2年度予算案の主な取組等について、説明申し上げます。

安心・安全

 昨年は、大型で強い台風により各地で大きな被害があり、市でも昭和49年の多摩川堤防決壊以来の災害対策本部を設置しました。一部地域に避難勧告を発令し、自主避難所も含めて12箇所の避難所を開設し、4千人近くの方が避難されました。想定よりも多くの方が避難されたことなどもあり、避難所のスペースや体制についての課題も見えました。これを踏まえて、水害時の避難所の開設や運営体制を整理し、基本方針を策定しました。地域防災計画の修正と併せて、風水害時の避難所を見直し、また、野川の浸水予想区域図の改定を踏まえ洪水ハザードマップを修正し、氾濫時の危険箇所や避難場所、災害対策についての情報を掲載した防災ガイドとして、市内全戸に配布します。災害対策本部と各避難所との情報共有に向けた体制整備や運営に必要な備品の充実も図ります。猪方、駒井町地区と多摩川住宅周辺地区では浸水被害が発生し、現在、原因究明と対策に向けて調査しているところですが、結果がまとまりましたら、改めてこれを踏まえた対策を講じます。また、多摩川堤防に設置されている2箇所の排水樋管については、ゲート開閉の遠隔操作化に向けた設計や監視カメラの設置などについて、国や都、多摩川流域の市区などと連携した緊急治水対策プロジェクトに基づき進めます。台風や集中豪雨などにより、河川の水位が高くなったときや、下水道の処理能力を超えて水があふれ出した場合を想定し、道路や建物が浸水する内水氾濫に備えて、下水道における内水浸水予想区域図を作成します。
 児童・生徒の熱中症対策に加え、避難所としての環境改善に向けて、全ての小・中学校の体育館には計画的に空調機を設置しますが、停電時でも電力が確保できる機能を備えた電源自立型により整備します。また、非常電源の確保と環境への配慮のために、電気自動車を庁用車として外部給電装置とともに導入を進めていきます。災害時の情報伝達手段として、市のホームページにアクセスが集中しても、安定的に接続でき、適切に緊急情報を発信できるようサーバを更新します。また、狛江ラジオ放送株式会社と、災害時に迅速かつ的確な情報提供を実施するための協定を締結していますが、避難行動要支援者にラジオを貸与することによりコミュニティFMも活用した情報提供体制の強化を図ります。
 地震対策として、木造住宅の耐震化を促進するため、耐震診断助成金の限度額の引上げや民有地の危険なブロック塀等撤去に対する助成を引き続き実施するほか、下水道において重要な幹線等の地震対策基本設計を行います。  
 防犯対策では、児童・生徒の安全対策として、防犯カメラを通学路等に増設するとともに、公園についても、誰もが安心して利用できるよう設置します。特殊詐欺被害防止に向けては、高齢者への自動通話録音機の貸与を実施するとともに、周知、啓発に取り組みます。長期間放置され、周辺に危険を及ぼす恐れのある特定空家等については、適切に指導等を行っていくとともに、家屋の撤去等についての助成制度を創設し、所有者に対して改善を促します。

健康・福祉

 地域共生社会を実現するための包括的支援体制の整備を進めるため、担い手の一つであるコミュニティ・ソーシャルワーカーを新たに南部地域であるこまえ苑エリアに配置し、地域資源の開発や地域の課題解決などに取り組みます。また、高齢者の生きがいづくりと、市民と協働した支え合いの社会の構築を目的とした介護ボランティアポイント事業を本格実施します。認知機能の低下などにより居宅内にごみが蓄積している高齢者に対して、片付けなどの費用を助成するごみ出しサポート事業は、手続きを見直すことにより利用の促進を図ります。誰もが尊厳を持って、その人らしく生活できるよう、本人にとって最適な権利擁護支援や成年後見制度の利用を促進していくことが重要です。そのため、権利擁護小委員会を設置し、成年後見制度の利用促進に向けた実施計画の策定に取り組みます。障がいのある方が住み慣れた地域で暮らし続けられるために、地域生活支援拠点の整備やグループホーム等の住まいの確保、充実が必要であり、面的整備に向けて検討を進めます。経済的に生活が困窮している方に対しては、個々の状況に応じた支援を行っていますが、新たに家計改善に向けた支援を実施することにより、自立への促進を図ります。また、貧困が世代を超えて連鎖しないよう、子どもの教育の機会を確保するために小・中学生を対象とした学習支援を継続して行うとともに、新たにひとり親家庭等の子どもへの学習支援も実施します。
 生活習慣病の予防に向けて、歯と口腔の健康を推進するため、歯周病検診の周知を図るとともに、対象年齢を拡大します。がん検診については、より受診しやすいように実施日程を見直すとともに、利便性の向上を図ることにより受診率の向上を目指します。また、特定健診の受診率向上につながるように、効果的な受診勧奨を行います。この他、風しんの抗体保有率が低い年齢層の方に対しては、引き続き抗体検査と予防接種を実施します。保育所や学校等における感染症の集団発生情報を早期に収集するために感染症情報収集システムを利用することにより、感染症の予防、拡大防止に努めます。新型コロナウイルス感染症の国内での発生が確認されていますが、関係機関と密に連携しながら、迅速で正確な情報提供に努めます。健康増進に向けて健康ポイント制度を実施していますが、日常生活において、歩く機会を増やすことを目的としたウォーキングマップの作成やウォーキング等を通して運動と健康の関係を学ぶ健康づくり運動講座を実施します。
 産後の母親に対して効果的な支援を行うため、個別面談の実施や里帰り出産等により市外で予防接種を受けた場合への接種費用の助成制度を創設します。また、特別な理由により予防接種の抗体が低下した方への再接種費用の助成を実施します。義務教育就学児の医療費助成制度については、小学校1・2年生の所得制限を撤廃し、子どもの健康増進と子育て世帯の負担軽減を図ります。
 4月30日に開設予定の子育て・教育支援複合施設「ひだまりセンター」では、子ども家庭支援センターと児童発達支援センター、教育支援センターの機能を有し、子どもの成長過程に応じた切れ目ない支援を提供します。児童発達支援センターは、市では初めての施設であり、支援を必要とする子ども一人ひとりに応じた育ちの支援を行います。さらに、保護者同士の連携を図り、子どもたちを支援するサポーターの養成にも取り組みます。また、医療的ケア児に対する支援を広げるためのコーディネーターの配置や関係者間での情報共有、課題整理のための会議体を設置します。

子ども・教育

 昨年の10月から始まりました幼児教育・保育の無償化は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う幼児教育の重要性や、幼児教育の負担軽減を図る少子化対策の観点などから取り組まれるものです。市では、保育園の待機児解消を目標にこれまで取り組んできましたが、新年度においても認可保育園2園の開設などにより定員を拡大します。また、新たな待機児対策としてベビーシッター利用支援の補助制度を創設します。無償化の対象とならない自主保育グループの利用者負担を軽減するため、補助金を増額します。子育てと就労の両立支援として実施している病児・病後児保育事業については、新たに民間事業者による訪問型サービスの利用補助制度を創設します。
 小学校の放課後対策として、学童クラブの待機児解消にも取り組んできましたが、新年度では狛江第三小学校放課後クラブの新設と今年度に開設した狛江第五小学校放課後クラブの定員を拡大します。また、岩戸児童センターの分室として駄倉小学生クラブを7月に開設します。令和3年度の開設に向けても、狛江第六小学校と小田急線高架下のスペースを活用した学童クラブの整備を行います。
 子育て・教育支援複合施設「ひだまりセンター」に移転する子ども家庭支援センターは、児童虐待防止対策や利用者支援などの機能を拡充し、ファミリー・サポート・センターと併せて一体的な支援を行います。また、教育支援センターでは、これまでの教育研究所の機能に就学相談機能を加え、相談体制の充実を図ります。不登校や障がいなど個々の児童・生徒に応じた適切な指導や支援が必要です。不登校対策では、これまで国のモデル事業などを行ってきましたが、その成果を踏まえて更なる支援の充実を図ります。特別な配慮を要する児童・生徒への支援に向け、全ての小・中学校で特別支援教室を開設していますが、中学校への自閉症・情緒障がい固定学級の設置に向けて、準備を始めます。
 小学校では新しい学習指導要領による教育課程が始まります。小学校中学年から「外国語教育」を導入、小学校における「プログラミング教育」を必修化するなど社会の変化を見据えた新たな学びへと進化します。市では、既に小学校3年生から外国語活動を行っていますが、ALT(外国語指導助手)の配置やデジタル教科書の活用により充実を図ります。プログラミング教育については、推進校として取り組んできた狛江第五小学校の研究成果を活かし、子どもたちの論理的に考える力を育みます。また、全ての中学校でインターネットを使ったオンライン英会話の実施とTOKYO GLOBAL GATEWAYでの英語体験学習を実施します。学校と地域が連携し、子どもを育てていくことが求められており、地域の方が持つ知識や経験を子どもたちの学びや体験に活かすために、学校支援ボランティアによる出前授業を実施します。
 次世代を担う子どもたちが発明する楽しさと創作する喜びを体験し、豊かな観察力と創造力を養うことを目的としたコンテストを民間企業と協働して実施します。

まちづくり・環境

 まちづくりにおける市の将来ビジョンを明らかにするとともに、目指すべき都市像を実現するため、都市計画マスタープランの改定及び立地適正化計画の策定に向けて、引き続き取り組みます。多摩川住宅地区の都市計画変更に向けて、手続を進めるとともに、東京慈恵会医科大学第三病院の建替計画に対応するため、和泉本町四丁目周辺地区の地区計画変更の検討を始めます。調布都市計画道路3・4・16号線について、小田急線高架下から世田谷通りまでの区間の事業化に向けて、基本設計を行いますが、東京都が施工する水道道路とともに、事業認可の取得の動きに併せて、両道路の地区計画制度等を用いた規制及び誘導方策の検証等のまちづくり方針の検討を始めます。生活幹線道路は、安全かつ円滑な交通環境を確保するため、計画的に改修を進めます。狛江駅北口地下駐車場は、改修工事に向けて設計を行いますが、開設当時と比べ、交通環境が大きく変わったことから、駐車場運営のあり方についても、検討を進めます。和泉多摩川駅南側に位置するぽかぽか広場については、和泉多摩川駅周辺及び多摩川との一体的な活用を見据え、ワークショップなどを通して策定している基本構想を踏まえて、整備に向けた実施設計を行います。公園・緑地の確保に向けて都市計画決定された歴史公園の整備を計画的に行っていますが、横穴式石室がある猪方小川塚古墳公園と貴重な出土品が発掘された亀塚古墳公園を開園します。
 地方自治体においても、「持続可能な開発目標(SDGs)」の要素を反映し、取組を進めていくことが求められています。新たな環境基本計画及び緑の基本計画では、これに基づいた目標を設定し、その取組を進めます。温室効果ガス削減の取組の一つとして、太陽光発電設備や家庭用燃料電池などの購入費用の助成対象に自家消費型の蓄電池を加え、家庭での再生可能エネルギーの利用促進を図ります。また、自然との共存による地域社会の持続可能な発展を図るために、新たに策定する生物多様性地域戦略に基づいた環境施策も併せて推進します。

文化・市民生活

 市制施行50周年記念事業では、「絵手紙発祥の地-狛江」として絵手紙を通じて市の魅力を内外に発信するため、絵手紙公募展の開催や絵手紙散策マップの作成などにより絵手紙交流の輪を広げます。また、市民参加で検討を進めてきた新しい市民憲章の制定や、市の生い立ちや魅力を綴った「新狛江市史」の刊行、全市的に実施する大運動会やラジオ体操会などを開催します。
 貴重な観光資源である多摩川河川敷は、昨年の台風により大きな被害を受けました。多摩川緑地公園グランドなどの復旧に向けて関係機関と調整し、できるだけ早く再開できるよう取り組みます。都市農業の振興に向けては、認定農業者を支援するための補助制度を創設するとともに、狛江ブランド農産物の普及、啓発を推進します。商工業振興では、「こまえ元気わくわく事業」や小規模企業者に対する資金融資の信用保証料の軽減を実施します。また、地域における創業支援や女性の働き方についてのセミナーを開催するほか、一人ひとりの働く意欲に応え、活躍できる環境を実現するため、テレワークなどの取組について、市としてどのように関わっていけるか研究します。

行財政

 「人権を尊重しみんなが生きやすい狛江をつくる基本条例」を本定例会で提案させていただいています。人権を尊重するまちづくりを推進するための会議体を設置するとともに、市においても職員一人ひとりが人権尊重に対する理解を深め、高い意識を持てるよう研修を実施します。そして、人にやさしいまちづくりに向けて、市民の皆さんと共に取り組みます。
 市に在住する外国の方に対して、「広報こまえ」などの市の情報を届けるため、多言語に翻訳できる専用アプリを利用した多言語情報配信サービスを実施します。また、納税業務を円滑に行うために外国語翻訳機の導入や外国語での納税案内を作成します。納税者の方の収納機会の拡大に向けては、市税等のスマートフォン決済サービスを始めます。
 限られた財源の中で、多様化する市民ニーズや行政課題に対応するためには、社会情勢に柔軟に対応できる組織づくりと効率的な行財政運営が必要です。これまで段階的に進めてきた小学校給食調理業務の民間への委託化については、全校での実施となります。市民サービスの向上及び業務の効率化を図るために、民間活力の利用に加え、技術革新にも目を向ける必要があり、RPAやAIなどを活用した行政サービスの効率化に向けた実証実験や、ペーパーレス会議の実施など業務改善を図ります。地方公務員法及び地方自治法の改正により新たに会計年度任用職員制度が創設されますが、職員数の適正化に向けては、引き続き検討します。学校における働き方改革では、これまで各学校で管理してきた給食費を公会計として市で管理することで、教職員の負担軽減を図るとともに、勤務実態を把握するため、出退勤管理システムを導入します。下水道事業については、地方公営企業法の一部を適用し、公営企業会計に移行することで、経営状況の明確化や効率的な資産管理などにより経営の効率化を図ります。
 市民センターは老朽化が激しく、早急な対応が必要となっていますが、広く市民の皆さんの意見を聴きながら、財政的な見通しも踏まえ、市の考えをまとめます。

今後に向けて

 新年度は、市制施行50周年という大きな節目の年であり、「第4次基本構想」の将来都市像「ともに創る 文化育むまち ~水と緑の狛江~」の実現に向けて動き出します。これまでの50年で狛江のまちは、大きく発展しました。これから始まる50年に向けて、市民生活がより豊かで、充実し、成長していくまちへと進んでいけるよう、新たな一歩を踏み出します。