1 日時 平成29年2月17日 (金曜日) 午前10時~午後0時5分
2 場所 特別会議室
3 講師 廣瀬 克哉氏(法政大学常務理事・法学部教授)
4 出席者 議員(21名)
5 演題 「議会基本条例について」

 現在、議会運営委員会では議会運営に関する課題を協議しています。
 その一つとして、議会基本条例策定の必要性について検討を始めるに当たり、議員研修会を開催しました。
 北海道栗山町で初めて議会基本条例が策定された経緯や、議会基本条例はなぜ全国の自治体で策定されているのかについて、「自治体議会改革フォーラム呼びかけ人代表」などを務められている廣瀬克哉先生を講師としてお招きし、御講演いただきました。

 

《主な研修の内容》

  • 2006年5月に北海道栗山町で全国で最初の議会基本条例が策定され、2016年の5月で10年が経過し、現在では750余りの自治体で策定されている。
  • 全国市議会議長会の調査では、2015年末までに全国の市議会プラス東京23区全体で54.6%の策定率となっている。
  • 多摩地区では、その後に策定しているところがあるかもしれないが、多摩市、八王子市、調布市、東村山市、立川市、小平市、国立市、あきる野市、日の出町が策定している。
  • 2006年から2010年までの間に、議会基本条例を制定したのは、町村議会が多い。
  • 1つは合併をして新しい議会運営をゼロベースで考えなくてはいけなかった自治体と、もう1つは、合併話が消え、自力で自治体の存続を図る必要に迫られた栗山町のような自治体である。
  • 栗山町は議会が委員会を立ち上げて、中長期の財政問題を検討した結果、今までの補助事業や直轄事業に頼った発展戦略をしていくと、住民が人為的に拡散し、社会基盤の維持などの経常的なコストがかかって、効率の悪い町ができ、短期的には発展したように見えるが、長期的には町の存続にとってマイナスという結論が出た。
  • このことを一般質問で町長に質問し答弁を引き出して、議会活動報告を個別に折り込んでも、町民は読んでいないという現実があった。
  • 町民に伝えていくには、各地区に出ていって、直談判しないと問題意識は伝わらないことがわかり、そのためのやり方で見つけたのが、宮城県本吉町(現在は気仙沼市に合併)が実施していた、議会という機関が実施する議会報告会であった。
  • 栗山町は議会報告会を導入して、議員が替わっても今後も継続して実施すべきだから、条例で制度として定着させようと考えた。それならば、議会全体をカバーする条例をつくろうということになり、議会基本条例ができた。
  • その後、住民と一緒に取り組んでいかないと町が続かないという危機感を持った自治体から、議会改革や基本条例が進んでいった。
  • 2010年以降は東京や大阪から30キロ圏の郊外型の住宅都市の自治体に議会基本条例が展開していった。
  • 首都圏では埼玉県や神奈川県の自治体は策定しているところが多い。近畿圏では滋賀県の市議会は全て基本条例を策定済みである。
  • 議会基本条例がなくても議会運営できるのに、なぜ全国で策定されているのか。議会基本条例はなぜ必要か。
  • 1つは議会の物事の決め方が、先例や申し合わせなど、個別に定めたものの集積が基本ルールになっていて、わかりにくい。基本条例を策定することによって、議会のルールが住民にとってわかりやすくなる。
  • もう1つは、議員間でも実はあいまいな共通了解となっていることを明文にすることによって、明確化して宣言でき、改革が制度として定着することができるからである。
  • 基本条例を策定せずに議会報告会を申し合わせによって始めた議会で、かなりの議会が既にやめている。
  • 目的意識がなく始めると、回数を重ねるごとに参加者が少なくなっていき、簡単にやめてしまう。
  • 目的意識を持って、何のためにやるかのメッセージを工夫して住民に届けない限り、住民は最初は参加しても、すぐに来なくなる。
  • また、申し合わせや規則ではなく、条例を策定する大きな意義は、住民に対する権利保障を自治体独自に決めるのは条例の根拠が必要で、申し合わせや規則は、結果的に権利を実現することはあるが、それは法律用語でいうと反射的利益になり、条例は権利の保障という考え方になる。
  • 議会基本条例を策定した自治体がどう活動しているかを見てみると、基本条例を改正したところが243、運用実績の評価作業をしているのが121、議員提案条例は乾杯条例を含めて139、議会による行政評価は66、専門的知見の活用は27である。見直し作業まではやっているけれども、専門家の意見も聞きながら、政策を細かく検討している自治体は、随分少ないのが現状である。
  • 議会基本条例を策定しての改革もまだまだ途中ということである。
     

 
 〈研修会の様子〉