議員研修会「議員定数と議員報酬について」(平成28年10月)
1 日時 |
平成28年10月24日 (月曜日) 午後2時~4時10分 |
2 場所 |
特別会議室 |
3 講師 |
中邨 章氏(明治大学名誉教授) |
4 出席者 |
全議員(22名) |
5 演題 |
「議員定数と議員報酬について」 |
平成27年3月26日に可決した「狛江市議会議員の議員報酬及び費用弁償等に関する条例の一部を改正する条例」は2年間の期限を設定しており、議会運営委員会で議員定数と議員報酬について検討していくなかで、有識者に専門的な見解を聞くため、全国市議会議長会の「議会のあり方研究会」で座長を務められた中邨章先生を講師として議員研修会を開催しました。
《主な研修の内容》
【議員定数について】
- 議会には、適正規模というものが必ずある。その指標を本研修で紹介するが、最終的には皆さんの政治的な決断になる。
- 鳥取市では議会に議会調査委員会を設置し、4常任委員会×委員数8名で議員数32名という答申が出ている。
- 常任委員会に必要な人数は8名というのが、全国的に共通の認識となっている。
- 定数で一番重要な基数は人口比というのが、世界共通の認識である。
- 2011年以降の数字だが、全国811市の議員数の平均は24.8名である。
- 5万~10万の都市では、議員数の全国平均は22.4名である。
- 人口の代表率(議員定数/人口)では、狛江市は人口8万人なので1人の議員が住民3,600人を代表している。これは、同じ規模の都市としては多いほうである。
- 有権者の代表率(議員定数/有権者数)では、狛江市は有権者数6万6,000人なので議員1人が住民3,000人を代表している。
- アメリカと比較すると、アメリカの平均的な町であるペンシルベニア州エリーでは人口10万人で議員数は7名である。
- アメリカの議員数は少ないが、それは日本と比べて、市の行政の仕事が圧倒的に少ないからである。
- アメリカの行政の仕事は、ごみの収集、道路の補修、税金の徴収、用途地域の確定だが、日本の地方行政は世界で最も守備範囲が広い行政である。
- 学校区で決めるやり方もある。狛江市は6区なので、3人なら18人、4人なら24人になる。
- 学校区は子供が歩け大人も歩ける距離を基盤にしているので、議員の密着度が上がる。
- 経済効率で考えると、狛江市の財政規模は約265億円なので、議員1人が大体12億円の歳出について責任を持っている。
- 財政規模が同程度の自治体と比べると、狛江市の議員は少数で健闘している。
- 狛江市の議会予算は約3億2,300万円なので人口8万人で割ると住民1人は議会活動に4,000円負担していることになる。基礎自治体の平均は2,000円なので、それに比べると高いことになる。
【議員報酬について】
- 議員報酬で重要なことは、若い人が議員になろうと思う報酬でないといけない。そうでないと、人材の確保と世代交代、民主主義のクオリティーが問題になってくる。
- 全国811市の議員報酬の平均は41万7,000円である。
- アメリカの議員はほとんど日当制だが、議会が討論すべき議案がほとんどないからである。
- 日当制には2つの問題がある。1つは若い人が議員にならない。もう1つは、やる気がなくなると言われている。日当制になると日当分だけ働けばいいという発想が出てくる。
- 議員の活動には不可視活動があり、日当制はなじまないと考える。
- 狛江市は政務活動費が月に2万5,000円、1年間で30万円だが、この額では立法作業や政策形成はできない。
- 議員報酬を考える場合、他の自治体の議員報酬と比べる方法と所属自治体の幹部職員と比べる方法がある。
- 全国の市議会議員の平均年齢は60歳をわずかに超えた。地方公務員の60歳の給与と比べると、議員報酬は低いと思われる。
【まとめ】
- 議員は「3ない」である。
- まず金がない。狛江市の議員報酬が年803万円、政務活動費が年30万円で、立法作業や政策形成は無理である。
- 次に人がいない。狛江市の議会事務局の人数が7人では、立法作業に関係する仕事は頼めない。
- 最後は時間がない。このような状況で立法作業や政策形成を議員に求める現在の制度は議員には過重であると考える。
- そこで2つの選択肢がある。
- 1つは日本の地方行政は幅が広いので、議員が立法機能を諦め、監視機能に徹する方法である。その場合には、定数の削減は必要ないと考える。
- もう1つの立法機能を諦めない選択をする場合は、議員を支える後方支援制度が必要である。
- 1つは議会事務局の充実を図る。それが難しいようであれば他の自治体や大学と連携して立法機能の充実を図ることが必要である。それには少数精鋭で議員の定数削減を考える必要がある。
〈研修会の様子〉
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登録日: 2017年2月22日 /
更新日: 2017年6月20日