平成27年度第2回狛江市総合教育会議(平成27年11月30日開催)
平成27年度第2回総合教育会議会議録
日 時 平成27年11月30日(月)午前9時~10時12分
場 所 狛江市防災センター302・303会議室
出席者 会長 高橋 都彦(市長)
委員 佐藤 正志,千葉 眞理,鈴木 晃子,有馬 守一(教育委員会)
参考人 平林 浩一(福祉保健部長),松坂 誠(児童青少年部長)
吉田 知弘(教育部理事兼指導室長)
事務局 高橋 良典(企画財政部長),小川啓二(企画財政部理事兼政策室長)
小泉一夫(教育部長),宗像 秀樹(学校教育課長)
欠席者 委員 熊谷 勝仁(教育委員会)
傍聴者 2名
議 事 ○議事説明 資料1 [42KB pdfファイル]
○協議・調整事項
1.教育委員会の重点事業における今後の方向性について 資料2-1 [810KB pdfファイル] 資料2-2 [204KB pdfファイル]
・特別支援教育
・地域人材の発掘・育成
2.支援を必要とする子どもに対する学校の役割について 資料3 [350KB pdfファイル]
○その他
-発言要旨-
○会長
これより,平成27年度第2回狛江市総合教育会議を開会します。
議事に入る前に,本日の総合教育会議の趣旨について事務局から説明させます。
○事務局
それでは,事務局から本日の議事の説明をさせていただきます。
まず,「協議・調整事項1.教育委員会の重点事業における今後の方向性ついて」につきましては,教育委員会で所管する事業のうち,今後,特に重点的に進めていきたいと考えている「特別支援教育」と「地域人材の発掘・育成」の2件について,教育委員会より説明するものです。
続いて,「協議・調整事項2.支援を必要とする子どもに対する学校の役割について」につきましては,昨今,広く社会的にも大きな問題として取り上げられている子どもの貧困に関連するもので,特に,国の貧困対策の大綱の一節「学校を貧困の連鎖を断ち切るためのプラットフォームに」というフレーズに表されているように,この問題は,市の児童福祉部局のみの問題ではなく,学校や教育委員会も含めた狛江市全体で考えていかなくてはいけない事柄である,という基本認識のもと,学校が社会的な役割を果たすために必要な行政側との連携について,委員の皆さまの協議・意見交換を通じて,改めて確認・共有してまいりたいと考えております。
なお,本日は,資料1のとおり,地方教育行政の組織及び運営に関する法律第1条の4第5項及び狛江市総合教育会議の設置及び運営に関する条例第8条の規定に基づく議事の参考人として,市福祉保健部から平林福祉保健部長,児童青少年部から松坂児童青少年部長,教育委員会教育部から吉田理事兼指導室長に,それぞれ出席いただいております。また,事務局として,市企画財政部から,高橋企画財政部長と小川企画財政部理事兼政策室長が,教育委員会教育部から小泉教育部長と学校教育課長以下,学校教育課職員が出席しております。
なお,熊谷教育委員長職務代理は,本日都合により欠席となっています。
事務局からの説明は,以上です。
○会長
事務局の説明が終わりましたので,議事に入ります。
「協議・調整事項(1)教育委員会の重点事業について」,教育部から説明をお願いします。
○事務局
それでは,教育委員会から『協議・調整事項(1)教育委員会の重点事業における今後の方向性について』説明します。
教育委員会では,昨年11月に狛江市の教育における各施策の基本的な方向性や重点項目等を定めた第2期狛江市教育振興基本計画を策定し,本年6月1日に開催された第1回総合教育会議においても,狛江市の教育の大綱とする旨,承認をいただいております。
本日は,この第2期狛江市教育振興基本計画に定める重点項目のうち,今後,特に推進を図っていきたいと考えている「特別支援教育」と「地域人材の発掘・育成」の2件について,今後の展開を中心に説明します。
まず,「特別支援教育の推進」ですが,狛江市立小・中学校における特別支援教育の現状から説明します。現在,小学校6校のうち知的固定学級が狛江一小と緑野小の2校に,情緒障がい通級指導学級が狛江三小,和泉小,緑野小の3校に,中学校4校のうち知的固定学級と情緒障がい固定学級が狛江一中1校に,情緒障がい通級指導学級が狛江二中1校にそれぞれ設置されています。このうち,狛江第一中学校情緒障がい固定学級につきましては,18年度を最後に在籍生徒が卒業し,その後在籍生徒がいないため,19年度より休級となっています。
次に,この狛江市の特別支援教育の現状のうち,24年度より実践した特別支援教室モデル事業の概要について説明します。
まず,拠点校となる本市の小学校の特別支援学級と,巡回校となる特別支援教室の設置状況です。お手元の資料「狛江市の特別支援教育について」の『Ⅰ 特別支援教室「狛江市モデル」』をご覧ください。狛江市には小学校が6校ありますが,そのうち狛江三小,和泉小,緑野小の3校には,情緒障がいの特別支援学級(通級指導学級)があります。この3校を拠点校として,それぞれ隣にある狛江六小,狛江一小,狛江五小を巡回校として,ペアを作りました。狛江三小と狛江六小の南部ペアを例にすると,従来は,子どもが通級指導学級のある狛江三小へ通って指導を受けていましたが,モデル事業では,教員が,子どもが在籍する狛江六小へ赴き,そこの特別支援教室で指導を受ける体制へと変わりました。狛江市では拠点校3校に対して巡回校3校という1対1のペア「狛江市モデル」を構築しました。この拠点校方式による巡回指導は,24年度の3学期から試行的に始め,25年度当初からは3ペア全6校で実施しました。対象となる児童については,どうしても拠点校まで通級して指導を受けることを希望された場合は,引き続き拠点校で指導を受けていただくことも可能としましたが,原則として,在籍校で指導を受けていただくことにしています。
続いて,「特別支援教室の実際について」をご覧ください。狛江市で実施している指導の現状を説明します。新たに特別支援教室を開設した3校では,空き教室等にパーテーションを設置したり,備品や教材・教具等を整えたりするなどして環境整備を行い,指導を行っています。指導内容は原則として拠点校の場合と同様とし,個別指導と小集団指導を組み合わせながら行っています。
このモデル事業における成果の一つとして,教員,保護者,児童等へ特別支援教育に対する理解が促進されたことが挙げられると考えています。特定の小学校の特定の教室のみで行われていると考えられがちであった特別支援教育が,すべての教職員や子どもたちにとって大変身近なものとなりました。これは,毎年開催している教員対象の悉皆研修会で理解啓発を図ったことのほか,拠点校の教員が巡回校へ訪問する機会が圧倒的に増えたことで,より教員同士の連携・情報共有等が進んだこともその要因といえると思います。また,当然のことながら「子どもが動く」から「教員が動く」システムになったことにより,「保護者の送迎負担がなくなったこと」や「子どもの時間的・精神的負担が軽くなったこと」なども成果であると考えます。これらの成果は関係教員の努力ももちろんありますが,本事業実施前の平成23年度に59名であった利用児童数が本年度は123名と2倍以上に増加したことに如実に表れていると思います。
さらに取り組んでいくべき今後の課題については,今,申し上げたとおり,指導の対象となる児童数の増加とともに,各特別支援教室における指導時間の総数そのものも増加することになりますが,逆に,教員は移動時間等により指導時間が減ってしまうこともあります。効果的な個別指導や小集団指導など,児童一人ひとりに合った指導内容や指導形態を精査・工夫していくとともに,複数の児童に対して同時に個別指導を進めることができる担当教員の指導力向上,さらに特別支援教室で学んだことや身に付けたスキル等を在籍学級でも生かしていけるような学級担任の指導力向上など,教員の専門性の向上が大切であると考えています。また,通級指導学級における適正就学を図っていくために,通級指導の開始や終了の仕組み・基準を明らかにしていくことも喫緊の課題であると考えています。
最後に,今後の取組ですが,まず,小学校においては,来年度以降も今年度までと同様に全校で特別支援教室として指導を継続していきます。これは,これまでの都のモデル事業としての取組ではなく,都の本格導入によるものであり,これにより教員等の配置が,今年度までと少し異なります。配置される教員数は,条件付で今年度までと同数となりますが,その他に非常勤の特別支援教室専門員を各校に1名ずつ,さらに臨床発達心理士等を各校に1名ずつ年10回派遣することとなります。また,中学校においては,狛江第二中学校の特別支援学級に一中・三中・四中から,それぞれの生徒が通って通級指導を受けていた従来の形から,来年度は,小学校と同様の巡回指導を試行したいと考え,準備を進めているところです。
「特別支援教育」の説明は以上です。
○会長
「特別支援教育」について事務局から説明がありましたが,この件に関して質問・ご意見等はありますか。
○千葉委員
指導室訪問で各学校を回っているときなどに子どもたちの様子を拝見していますが,最近は,新しくi-Padを利用するなど,子どもたちが増えてもそれなりにとても楽しそうに生き生きと学んでいる姿を見て,とても良い方向に進んでいると実感しています。教育全般として,子どもたちが良い状況に向かっていると思いますので,この特別支援教育も今後も進めて行くべきであると考えています。
また,1点,設備のことですが,多くの学校で,特別な教室は広々としていて子どもたちも動きやすくなっていますが,パーテーションが少し気になっています。学校の教室の明かりは部屋の真ん中にあり,その真下がパーテーションで区切られて,影になっているところにいる子どもは少し暗くなっていて,またその日の天候によっては閉鎖的な感じになるような気がしますので,もう少し工夫ができれば良いのではないかと思いました。
○佐藤委員
私は,仕事の関係で近隣の市も含め色々な所に行く機会が多いのですが,以前とある市に行くと,そこは特別支援教室をつくって,巡回・指導を始めたばかりのところでした。そのとき,2校がペアになって進めている狛江の状況を話したところ,とても驚いていました。狛江で取り組んでいる特別支援教室モデル事業は,多摩地区の中でも非常に先進的なシステムですので,ぜひこの充実を図っていきたいと思います。
また,中学校も更に充実させていく必要があると思いますが,来年から試行の形態で実施される方向性を教育委員会が打ち出していますので,これも見守っていただきたいと思います。特に中学校の場合は,1校に対して3校という体制ということで,小学校とは少し状況が変わると思いますので,その辺りも注目して見ていきたいと思います。
○教育長
小学校が通級指導の利用児童数が倍増した,という実績が出ていますが,この子たちが中学校に進学すると,当然,一定数の子どもたちが第二中学校の学級に通うはずなのですが,これまでは,ほんの僅かしか通っていません。第二中学校の担当の教員に聞くと,他の中学校にも指導が必要な子どもたちが存在していますが,小学校と異なり,中学校の特別支援教室の制度が整っていないので,通常学級に通う流れが強くなっている実態があります。事務局としても,必要な指導を小学校から中学校に継続していく体制は整えていかなくてはならないと思っていますので,それを来年度の試行で実施に移していきたいと考えています。ぜひ,市の力も借りながら,一歩でも進めていけたら良いと考えています。
○鈴木委員
私も千葉委員と同じく,指導室訪問で少しの時間ではありましたが色々な学校の特別支援教室の状況を拝見しました。拠点校・巡回校に関わらず,児童と教員の信頼関係が非常によくできていると感じました。また少し違う話になりますが,かつて小学校中学年頃から悩まれて,ご夫婦でも意見がなかなか合わずに最終的に6年生の2学期から特別支援学級に移ったケースがありました。もちろん学校には話しづらい部分もあると思いますが,学校側と保護者側で早く気づいて寄り添っていただけるような体制を特に学校側から取り組んでいただきたいと思います。
○教育長
現在は,就学相談で丁寧な相談を通しながらその様な方向付けをしていく形です。学校の担任が声をかけるのは保護者の方との意識の問題がありますので,非常に難しいのが現状です。その部分が教育委員会の役目であり,ある程度のそれまでの診断等を元にしながら見立てをして,エスコートすることが必要です。
○鈴木委員
その子にとってより環境の良い所で学ばせてあげられるように,周囲の大人が行っていくことが大事だと思います。
○会長
デリケートな問題があると思いますが,学校として,「子どもにとって何が良いか」という視点でぜひ取り組んでいただきたいと思います。また,教育部長から説明がありましたが,私としても,来年度,中学校において,狛江第二中学校を拠点校として特別支援教室事業を試行し,その状況を見守って行きたいと思います。
それでは,次に「地域人材の発掘・育成」です。事務局から説明をお願いします。
○事務局
それでは,「地域人材の発掘・育成」について説明します。
まず,このテーマの現状認識として,各自治体における地域人材の発掘・育成については,代表的なものとして,文部科学省が強く推進してきた学校支援地域本部,学校支援ボランティア制度があり,この制度は,これまでに多くの自治体で実際に導入がされてきているところですが,狛江市教育委員会においては,導入ができていませんでした。
しかしながら,来年度,小田急線高架下に市民活動支援センターの開設が予定されていることと,昨年度に策定した第2期狛江市教育振興基本計画において,この市民活動支援センターの開設を念頭に置いたうえで,計画書の中に『関係部局との連携・役割分担のもと,市全体として,有機的に地域の人材の発掘・育成を推進していくための基盤づくりを進めるほか,その役割に基づいた各種の取組みを展開していく』との記載をいたしていますので,基本的な方向性としては,この計画書の文言のとおり,市民活動支援センターの機能をうまく活用し,ある場面では市民活動支援センターの機能を使わせてもらうことで,あるいは,また違う場面では,市民活動支援センターと役割分担を行いながら,という形で,市民活動支援センターと有機的な連携を図りながら,効率的に狛江市の教育分野における地域人材の発掘・育成を進めていきたいと考えております。
なお,既に,政策室協働調整担当も含め,実務担当者によるワーキンググループを設置しておりますので,このワーキンググループで,27年度末までに具体的な連携の方策の検討を進める予定としております。
教育委員会からの説明は,以上です。
○会長
説明が終わりましたが,ボランティアを活用した学習支援というものを教育委員会としてどの様に捉えているのか,もう少し説明していただきたいと思います。
○教育長
大きな流れから見ると,学校週5日制が始まったときに,地域の教育力を子どもたちのために投入するということで,土曜日に様々な地域活動が実施されるようになりましたが,その後,なかなか長続きせず,結局,授業日に変更している実態があります。現在推進されている学校支援地域本部は,もう少し幅広い見守り活動や教育活動への地域人材への支援など,様々な形で学校の実態において取り組むものです。ただ,地域活動が非常に盛んな地域とあまり盛んでない地域があり,私の実感では,狛江はやや難しい地域でないかと感じています。また,11月14日の読売新聞の記事ですが,文科省でこれまでの学校支援地域本部に代わり,もう少し総合的でスケールアップした地域学校協働本部を構想していて,これから導入を進めていくとなっています。学校支援地域本部と地域学校協働本部の違いは私も正確には把握していませんが,全市的な統括コーディネーターを置くことで,単に学校任せではなく,そこで人材の情報を吸収して,各学校のニーズを把握しながら学校に人材を派遣してもらったりすることを骨格にしています。これは,市で推進している市民活動支援センターと極めて近く,その教育版の様な形です。これからの方向性を踏まえていくと,市民活動支援センターと地域学校協働本部が重なってくる面がありますので,先程説明にあったように,関係部局でワーキンググループを立ち上げて今後の方向性を探っていくことが一番求められているのではないかと思います。
○会長
市民活動支援センターは,来年度から運用を開始します。始めからこの市民活動支援センターに多くを期待することもなかなか難しいと思いますので,その点を含めてワーキンググループでも検討してください。また,先程の話は狛江市では,ボランティアの活用は教育では難しいという意味ですか。
○教育長
非常に多様な人材が,様々な形で活発に学校へボランティアが入っている地域もあれば,登下校の見守りや事業の中で単発的な地域人材を活用するなど,もっと必要なところもあります。狛江市の場合は,地域の人材をまだ引き出し切っていないのではないか。という意味合いで申し上げました。
○会長
他に質問・ご意見等はありますか。
○千葉委員
和泉小学校や狛江第六小学校など多摩川に近い学校では「水辺の楽校」を行っていたり,狛江第五小学校では野川で野鳥の会などの方々に話を聞いていたりしています。また,農家の人に畑で芋ほりをさせていただいたりするなど,各校が独自に行ってきている部分もあります。
○教育長
これまでの制度では,教育活動をメインに考えていましたが,これから文科省が始めようとしている事業は,放課後教室など子ども達の居場所として学校施設を利用しているようなものも含めて,地域学校協働本部で地域の人をコーディネートしていこうというものです。現在,教育委員会ではなく児童青少年部が所管している事業まで役割が広がるものと思います。
○千葉委員
地域性はありますが,狛江市はとても小さいまちですので,子どもたちが狛江の良い部分を感じながら,また市民も自分の出身校や自分の子どもの学校だけをサポートするのではなく,狛江市全体の子どもをサポートしていただけるような方向性でまとまっていくと良いと思います。
○会長
コンパクトさを生かしたまちづくりは,これまでも進めてきているところですが,この件について,児童青少年部長からは何かありますか。
○児童青少年部長
KoKoAは現在土曜日も放課後も開いていますが,文科省が,今後区市町村ごとに校長OBらを統括コーディネーターとして配置されるということですので,その様な方が活動に加わってくると,色々なアドバイスもいただけるなど,活動に広がりが出ると思います。
○佐藤委員
学校に地域の色々な人材が入ってくるということは,学校教育が活性化し,教員の思考も広がっていく,子ども達の教育活動にも役に立ち,非常に重要であり積極的に色々な学校で行われていますのでとても良いことだと思います。
ただ,これに関する大きな課題として,多忙な副校長のなり手不足があります。現在,副校長のなり手が非常に少なく,未配置校が出るのではないかという話まで出てきています。そのような状況の中で,地域の人材との繋ぎ役を副校長が行っていますが,このことが多忙の原因の1つになっていますので,地域との連絡役を各学校のコーディネーターが担う学校支援地域本部を充実させていくことが大切だと思います。しかし,その一方で,コーディネーターとしての人材がなかなか得られないことも大きな問題となっています。広い視野で公平な立場で教育にも精通しているコーディネーターは簡単に見つかるものではありませんが,何とかしてそのような方を探し,新聞記事にあるように,統括コーディネーターという市全体で大きく括る職ができて,各学校のコーディネーターを育てて行くようなシステムがあわせてできれば,学校にとっても有効なシステムになると思います。
○会長
コーディネーター役は非常に大変で,それを見つけるのが大きな課題であるということは私も認識していますが,狛江市でもその辺りはやはり課題となっているのでしょう。
○鈴木委員
現在の状況では,町内会の高齢者が自発的に地域の子どもたちを見守る,という形で始まったような登下校の見守りが最も多いと思います。そのような方がボランティアになるのかは分かりませんが,やはり,学校の教員が本来の仕事に集中できることが非常に大事だと思います。狛江市のそれぞれの地域の大人が子どもを見守りながら地域で育てていく市であると良いと思います。先行して取り組まれている他の自治体のノウハウも参考にしながら,狛江市のサイズに合った方法で取り組んでいただきたいと思っています。
○会長
狛江市は,PTA組織がとてもしっかりしていると感じますし,それはなかなか他の自治体では見られないところだと思います。ボランティアとはいえないかもしれませんが,色々な場面学校のことを心配していただいていて,特に防災面ではPTAの方を頼りにしています。狛江市では,そのような方と上手く連携していくことが大事だと思います。ところで,佐藤委員の話にありました副校長の多忙化は,どのような状況なのでしょうか。
○佐藤委員
他の自治体でも,同じような状況にあると思います。
○会長
狛江市ではどうでしょうか。
○教育長
学校支援地域本部では,良いコーディネーターを得た学校は,極めて有効に機能しますし,なかなかそれが見つからない学校は足踏みしてしまうこともあると思います。例えば,そのような人が辞めてしまうと,全て副校長が担当することになり,土日も学校に出て休みが取れなくなってしまいます。その状況を見るに見かねて,なくなくそうした活動を半分くらいに減らしたという経験もあります。きちんと形にしていく為には,統括コーディネーターだけではなく,各学校のコーディネーターについても,学校関係者に任せるのではなく,地域の人材が窓口になり,人材を教室に橋渡ししていくという制度にならなければ先細りになっていくと思います。
○会長
コーディネーターをどの様に育成していくのか,という課題も見えてきました。この議題についてはこれで一旦終了しますが,これまでに皆さんからいただいたご意見は,教育委員会の意見として承ります。
次に,『協議・調整事項(2)支援を必要とする子どもに対する学校の役割について』事務局から説明をお願いします。
○事務局
それでは,『協議・調整事項(2)支援を必要とする子どもに対する学校の役割について』説明します。
まず,子どもの貧困につきましては,昨今,広く社会的な問題として,世間一般にも認知がされ,狛江市議会においてもたびたび取り上げられるなど,狛江市としても,行政の各分野を横断する課題として捉え,適切な対応を図っていく必要がある,との認識を持っている案件になります。本日は,この子どもの貧困対策のうち,特に『学校と児童福祉部局との連携,協力』という部分に焦点を当て,委員の皆さまの協議・意見交換を通じて,改めて,このことに関する課題や今後のあり方,方向性などを確認・共有してまいりたいと考えております。
それでは,資料3をご覧ください。
表紙をめくっていただき,資料1ページです。ここは,本日の会議の概要・アウトラインを示しています。ここでは,本日の会議の流れを大まかに示しておりますので,ざっとご確認いただければと思います。
次に,2ページです。「背景1.子どもの貧困対策法,貧困対策の大綱」です。子どもの貧困につきましては,ひとり親家庭の増加と親の所得減少や,そもそも親が働いている場合の貧困率が他国と比べて高い,つまり,働いても貧困から抜け出せないということから社会的な問題となっており,その実情も,国の各種の統計調査から明確に現れてきております。また,毎年度,実施されている国の全国学力・学習状況調査の結果を分析した文部科学省の委託研究によれば,『親の経済状況も含めた子どもの家庭環境は,子どもの学力に影響する・相関関係がある』という結果も出ているところです。このような状況を踏まえ,国は,昨年1月に子どもの貧困対策の推進に関する法律を制定し,国や地方公共団体の責務を明確化するとともに,8月には子どもの貧困対策に関する大綱を策定し,ここで,学校が「子どもの貧困の連鎖を断ち切るプラットフォーム」と位置付けられたところです。
次に,3ページです。「背景2.生活困窮者自立支援制度と国の要請」です。
こちらも,生活困窮者や生活保護受給者の増大が社会問題化したことを踏まえ,本年4月から,生活保護制度の改革と生活困窮者自立支援制度の導入の一体的実施が図るための法整備が行われております。そして,特にここで着目すべきなのは,この法整備を前に,厚生労働省と文部科学省の両者から法の施行にあたり,学校や教育委員会と福祉部局の連携を密にしていくよう,各自治体あてに要請がなされている,というところで,生活困窮者を救うために,各自治体の教育委員会と福祉部局がともに協力・連携するよう,国も強く求めている,ということです。
これら,子どもの貧困に関する社会的な制度の変革などを踏まえ,4ページ,「支援が必要な子どもを把握するということ」における「現状」です。まず,現在,学校におきましては,気になる子どもがいれば,主として,担任による声かけから,学校としての組織的な情報共有・対応を行っており,あわせて,案件に応じて,教育相談所と連携しながら,スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーなどの専門家も交えて対応を行っているところです。一方,市役所の児童福祉部局や関係諸機関では,福祉総合相談をはじめとした市の各種相談窓口に来た相談で,支援者が必要な人を把握しているほか,全児童・生徒にSOSカードを配布し,緊急的な事態が発生した際の連絡・相談先を周知しています。また,子ども家庭支援センターや児童相談所,民生委員・児童委員などが,それぞれのネットワークにより異変を察知し,把握したりしているのが現状です。
次に,今,申し述べた現状を『市役所・関係機関と学校の違い』として整理しているのが,5ページ,「子どもの異変の気付き,要支援者の把握」です。先に説明しましたとおり,市役所や関係機関では,近年は法整備により第三者による通報はあるものの,基本的に『待ち』の姿勢で支援者を把握することとなりますが,一方の学校では,子どもが日中のほとんどの時間を,一定の,言い換えると,ある程度安定した人間関係の中で過ごしていることから,担任や仲間が,子どもの様子が普段と違うことに『気付く』ことができる場であると考えられ,これは,現在,課題となっていて,社会的な要請としても求められている「支援が必要な子どもとその家庭を早期に見つける」には,学校は適していると言うことができます。
ということで,最後の6ページになりますが,今後の方向性として,まず,基本的な認識として,支援が必要な子どもとその家庭を救うために,今,学校の力が必要であること。また,そのような子どもとその家庭を確実に支援につなげるためには,学校,スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカーと児童福祉部局,関係機関との連携とスクールソーシャルワーカーの活動推進,そのための環境整備,教育委員会・学校の協力が大事になってくる,と結論付けています。
現在,各学校においても,ケース会議など,ときどきの状況でそれぞれの連携は図られておりますが,これまでに申し述べたとおり,社会的な要請として,今は,学校や教育委員会と児童福祉部局の強い結びつきや協力が必要で,かつ不可欠であり,それは,学校が,他の行政機関とは比較できないほど,一人ひとりの子どもの状況を見られる・異変に気付きやすい,という性格を本質的に持っている,ということによるものです。
本日は,このような形で,事務局として現状の把握,課題整理,今後の方向性を整理させていただきましたので,これより,それぞれの立場から意見交換をお願いし,学校が,教育機関の立場において,子どもの貧困に関して,特に,支援が必要な子どもを救うために果たすべき社会的な役割について,委員の皆さまの協議・意見交換を通じて,今一度,確認・共有をお願いしたいと考えております。
事務局からの説明は,以上です。
○会長
事務局からの説明が終わりましたが,福祉保健部と児童青少年部から,補足はありますか。
○福祉保健部長
本日の議題が「子どもの貧困」ということで,経済的な貧困がメインでターゲットになっているかと思いますが,福祉保健部としては,例えば,ネグレクトや親の精神疾患など,親の愛情の貧困・プアといったようなものも根底にあると思っています。そうした家庭の貧困が,子どもの態度や学力に表れる,1つのバロメーターになると認識しています。子どものバロメーターや子どもから発信された信号をキャッチして,それを家庭への支援に繋げるという流れの中で,学校現場には,このセンサー的な役割をぜひお願いしたいと思っています。
○児童青少年部長
児童青少年部には,子どもと家庭の総合的支援機関として,子ども家庭支援センターがあり,家庭を支援するためのワーカーも配置されています。特に,ひとり親家庭に関しては母子・父子自立支援員が配置されていて,公的な制度や支援事業に関する情報の提供や利用支援などを行っています。センターには相談から入ってくることが多いので,普段からいかに早く情報を取れるかということが大切であると思っています。その点では,学校をはじめとして,情報のアンテナを多く張り巡らせていきたいと考えています。その中でも特に重篤な事案になると判断した場合には,子ども家庭支援ネットワーク会議に繋いで,総合的に判断することもできます。いずれにしても,学校からの情報は大変重要だと考えています。
○会長
行政側としても学校における気づき・センサー的な役割に対する期待が非常に大きいという趣旨の補足意見がありました。この件に関して,学校を所管する教育委員会としてはどのように捉えていますか。
○千葉委員
子どもの貧困については,全国的に見るととても大変な地域もあるようですが,私の実感としては,狛江市は結構対策が進んでいるのではないかと思います。15~20年前,中学校はまだ弁当でしたが,弁当を持参できていない子どもがいたという話は聞いていました。現在,中学校給食もきちんと実施され,昼食は,学校に来ている子どもは栄養を考えられた温かいものが食べられるようになって,本当に良かったと思っています。
またQ-Uアンケートでは,「朝ごはんを食べていますか」「家の人とご飯を食べますか」「学校に行くのは楽しいですか」などがあり,Q-Uアンケートを行うことで,教員が子どもたち一人ひとりを見ることができるようになって,どの子が問題を抱えているのか,担任が把握することができています。学校が楽しく,学校を休みたくないという子どもたちも増えていますので,狛江の子どもたちは,学校にいる間は,豊かな時間を過ごせているのではないかと実感しています。しかし,個々の問題を抱えている子どもがいることも確かですので,そのような子どもたちをどの様に見つけて行くか,支援して行くのか。連携をとって行っていかなければならないと思います。
○会長
学校現場としては,どのように考えているのでしょうか。
○教育長
一般社会から見ると,学校と行政の連携ができていて当たり前という印象を受ける方もいると思います。教員は,担任の立場になったときに,すべての子どもを公平に扱わなければならないというモラルを持っていますので,貧困だから,問題があるからといって,子どもたちを区別することは出来ません。なおかつ,担任を持つと1~2年以上保護者と信頼関係を保ちながら過ごしていかなければなりません。認識や支援の手違いで猛烈な批判やクレームを受けるケースもあります。担任としては貧困か貧困でないかという視点で子どもを見ることは,例えそれが分かっていても,そのことを他の機関に提供することに躊躇いを感じているのではないか,と思います。現在は,スクールソーシャルワーカーの制度があります。その中で,担任ではなくスクールソーシャルワーカーが子どもを観察し,福祉に繋げなければならないと判断してもらえれば,教員としては,保護者からクレームを言われる心配がなくなります。もし担任から児童相談所に情報が伝わったことを親がキャッチすると,そこで信頼関係が崩れてしまいます。そのようなことで,如何に各校の校長が適切に情報提供をしていくことが大きな課題となってきました。そのような背景を踏まえながら,学校や教育委員会として情報共有のあり方を考えて行く必要があると思います。
○会長
デリケートな問題であることは分かりますが,行政として秘密は十分守っていきますし,教員の中にも,気付いてもどうして良いのか分からないという人もいると思います。市の制度としてこのようなものがあることを知らないために,分からないまま過ぎてしまうこともあるかもしれません。他人に気付かれないように進めることは可能なことですので,保護者との信頼関係をどのように築いていくのか,知らないという空白部分をどのように埋めていくのかを学校現場に強く求めたいと思います。
○佐藤委員
以前,私が校長をしているときに,父子家庭で問題を抱えている子どもがいました。個人として色々話をして,児童青少年部の方とも話をしていく中でホームヘルパーを派遣する制度を聞き,週に3回位,夕飯をつくるなどしていただいた結果,子どもの生活が安定に向かったことがあります。私は,それまでそのようなシステムがあることを知りませんでしたが,市役所の職員と話をすることで,そのような支援を受けることができました。スクールソーシャルワーカーという専門家が学校に入ってくることにより,役所と学校を繋ぐ役割をしていると思います。
また,単なる収入の問題だけではなく,保護者が精神疾患にかかっているようなケースもいくつかありました。医療の関係者が来ていただけるようなシステムもできると有効ではないかと感じています。
○福祉保健部長
ケース会議には,保健所や児童相談所など,直接的には医療事務には関わらないものの看護師や保健師も加わってきますので,そこまで持ち込めれば,医療関係については,対応は十分できると思います。
○会長
問題が顕在化する前の段階で,お互いに意見交換や情報交換などする場が必要ではないかと思いますが,その点についてはどうですか。
○福祉保健部長
以前,中学校の校長と話す機会があり,学校側としては,家庭環境の情報をあまり持っていないことを聞き驚きました。その意味では,行政側としても,学校の事情の認識不足があったと思いますので,情報の持ち方や連携の仕方,すりあわせの場が必要なことを実感しました。
○鈴木委員
先日,銚子市の母子の事件の裁判の報道がありました。県営住宅の強制退去がきっかけでしたが,この母親は市役所に生活保護の説明だけ聞きに行き帰ってしまっていたことがあったそうです。学校では子どもは変わった様子はなかったということでしたが,やはり少しでも引っかかる部分がある時は自治体でそれを必ず見つけ,情報共有していくシステムがあると,悲惨な状況・最悪の状況を生まずに済むと思います。
子どもの貧困の状況を把握するには,学校でも担任が子どもの普段の何気ない会話から拾っていける部分も沢山あると思います。足立区ではかなり踏み込んだ内容のアンケートが実施されたようですが,その方法がそのまま狛江市に当てはまるという事ではないと思いますので,狛江市に合った方法を考えるべきだと思います。また,実際に自分が保護者同士で話していると,貧困ではなくともネグレクトのようなことを耳にすることがあります。学校が把握できていない予備軍のようなものがあるかもしれません。それを第三者が学校に知らせることができるかというと,そこはデリケートな問題になると思います。色々な状況があってどこまで踏み込めるかは難しいですが,子どもを救い周りの子どもと同じように教育を受けられる状況にしていくことが教育委員会と市の責務であると思います。
○千葉委員
学校で察知するということですが,私がPTAにいたときに,役員にも各クラスの保護者の学年委員の方がいて,その方が気付いて役員に上げ,学校に相談しようとしたこともありました。PTAの方々にも,皆で子どもたちを支え,PTAの中で出てきた話を,公の場で出すのではなく学校側にそっと伝えることができるようにしていくべきだと思います。保護者面談・家庭訪問・保護者会の機会もあり,その中から汲み取れることもあると思います。個人情報を気遣いながらもきちんとソーシャルワーカーや行政に繋がって行く流れを再度確認し直していただきたいと思います。
○教育部理事
担任は,目の前にいる子どもに少し元気がない,交友関係が少し変化しているなどのことは,間違いなく把握できると思います。子どもたちに話しかけてみても,子どもたちの年齢によっては,なかなか本当のことが言えない,言わないこともあります。そうすると保護者の方に相談をしてみるけれども,様々な事情があって,保護者からも本当のことが聞けない。おかしいと気付き,何とかしようとするけれども,できないこともあります。そのようなときに,学校から情報をいただくことができれば,色々な支援ができます。学校現場からすると,一緒に連絡を取っていただくことは,大変心強いと思います。
○会長
子どもの貧困は,デリケートな部分を強く持っている問題ですので,どのように問題に対応していくのかは,教育現場だけではなく,行政の現場でも認識を持ちながら行っていくべきだと思います。情報の共有がまだまだ足りていない,実際にお互い認識が一致したときにどのように対応していくのか。対応の仕方も含め,共通認識が足りないのは今後の課題となります。市長部局と教育委員会との垣根を壊していかなければ対応できない問題もあると思います。
これで,この議題は終了とします。
以上で,予定していた議題は全て終わりましたが,最後に,事務局から次回の予定について,事務局よりお願いします。
○事務局
それでは,事務局から,総合教育会議に関する今後の予定をご案内します。
次回の総合教育会議は,年度明けの開催を予定しています。開催にあたっては,日程その他必要な事項は,改めて個別に調整をさせていただきますので,よろしくお願いします。
○会長
それでは,これで平成27年度第2回狛江市総合教育会議を閉会します。